本にならないのかな、と思うテクストはいろいろある。1996年に林道郎さん田中正之さん大西廣さんが共同執筆されていた『集中連載 美術史を読む 6人の美術史家による6つの方法』とか。もう20年も前に書かれたものだけど、美大に入ったらとりあえず読むものとして今でも有効と思う。
— 小田原のどか (@odawaranodoka) 2014年11月9日
美術史を読む 6人の美術史家による6つの方法:
1996年の連載(全6回、1月号〜6月号)で扱われた美術史家は以下の通りです:
- ノーマン・ブライソン(Norman Bryson) — 「絵画という記号」(1996年1月号)
- ロザリンド・クラウス(Rosalind Krauss) — 「モダニズムを超えて」(1996年2月号)
- T・J・クラーク(T.J. Clark) — 「絵画とイデオロギー」(1996年3月号)
- マイケル・フリード(Michael Fried) — 「批評と歴史」(1996年4月号)
- イヴ=アラン・ボア(Yve-Alain Bois) — 「モデルとしての絵画」(1996年5月号)
- グリゼルダ・ポロック(Griselda Pollock) — 「フェミニズムと美術史」(1996年6月号)
第一回 ノーマン・ブライソン--絵画という記号
https://bijutsutecho.com/backnumber/578
第二回 ロザリンド・クラウス--モダニズムを超えて
https://bijutsutecho.com/backnumber/580
第三回 T・J・クラーク--絵画とイデオロギー
https://bijutsutecho.com/backnumber/581
第四回 マイケル・フリード--批評と歴史
https://bijutsutecho.com/backnumber/582
第五回 イヴ=アラン・ボア--モデルとしての絵画
https://bijutsutecho.com/backnumber/583
最終回 グリゼルダ・ポロック--フェミニズムと美術史
https://bijutsutecho.com/backnumber/585
やっぱり僕はニューアートヒストリアンが好きだなあとつくづく思う。そして美しい理論が。ノーマン・ブライソンとかマイケル・フリードとかアルパースとか。「理論」で押し切るのは厳しいと先生にもご指摘を受けているのに。実証主義的なアプローチをしないといけないのに。
— 北村匡平|新連載「藤井風論——救済の音楽」新刊『観る技術、読む技術、書く技術。』『遊びと利他』 (@Kyohhei99) 2013年4月10日
1996年の『美術手帖』連載「美術史を読む 6人の美術史家による6つの方法」は、1980年代の「新美術史」(New Art History)運動の影響を受けた6人を紹介していますが、アメリカの批評・美術史界(特にOctober誌グループやアメリカの大学美術史学科)の人物に偏っている点は事実です。選ばれた6人(Norman Bryson, Rosalind Krauss, T.J. Clark, Michael Fried, Yve-Alain Bois, Griselda Pollock)は、イギリス生まれの人物も含むものの、1980年代以降の活動の中心がアメリカ(NYの批評シーンやHarvard, Berkeleyなどの大学)で、アメリカのポストモダン批評(記号論・制度批判・フェミニズムなど)を強く反映しています。
一方で、「新美術史」運動は主にイギリスで起こった(BLOCK誌や1986年の『The New Art History』本が象徴)にもかかわらず、この連載がアメリカ寄りなのは、当時の日本の美術批評界がアメリカのOctober系理論に強く影響を受けていたためと考えられます(翻訳ブームやポストモダン・アートの流行)。
あえてイギリス側で固めた場合を妄想すると、イギリスの社会史的・マルクス主義的・フェミニズム寄りの新美術史家を中心に人選が変わります。元のテーマ(記号、モダニズム超え、イデオロギー、批評と歴史、モデルとしての絵画、フェミニズム)をできるだけ反映しつつ、イギリス生まれ・イギリス中心の活動家を優先。BLOCK誌の貢献者やイギリスの大学美術史家(Warwick, Leedsなど)から選んでみました。テーマも似せて調整。妄想的人選:イギリス側で固めた全6回
- Norman Bryson(ノーマン・ブライソン) -- 絵画という記号
元の連載の1回目と同じ人物ですが、イギリス生まれ・イギリスの新美術史の初期メンバーとして再選。イギリスで育ち、Cambridge大学で学んだ後、アメリカ移住前に視覚理論を確立。**『Vision and Painting: The Logic of the Gaze』(1983年)**で、絵画を「記号」として分析し、イギリスの視覚文化研究の基盤を築いた。 - John Barrell(ジョン・バレル) -- 風景を超えて(モダニズムを超えての代替)
イギリス生まれ・Warwick大学教授。**『The Dark Side of the Landscape』(1980年)**で、風景画をイデオロギー・階級の産物として解体。イギリスの新美術史で「風景と権力」をテーマに、モダニズムの「純粋美学」を批判的に超えた代表。 - T.J. Clark(T.J.・クラーク) -- 絵画とイデオロギー
元の連載の3回目と同じ。イギリス生まれ・イギリスの新美術史の中心人物。**『The Painting of Modern Life』(1984年)**で、Manetや印象派を階級闘争の文脈で読み直し、イギリスのマルクス主義美術史を象徴。 - Michael Baxandall(マイケル・バクサンドール) -- 視覚文化と歴史(批評と歴史の代替)
イギリス生まれ・Warwick大学教授。**『Painting and Experience in Fifteenth-Century Italy』(1972年、1980年代に影響大)**で、ルネサンス絵画を社会・視覚の歴史として分析。イギリスの新美術史で「視覚文化(visual culture)」の先駆け。 - John Tagg(ジョン・タグ) -- モデルとしての写真(モデルとしての絵画の代替)
イギリス生まれ・Binghamton大学(アメリカ)教授だが、イギリスの新美術史の写真理論の代表。**『The Burden of Representation』(1988年)**で、写真を「モデル」として権力・制度の産物と分析。イギリスの視覚理論を写真に拡張。 - Lisa Tickner(リサ・ティクナー) -- フェミニズムと美術史
イギリス生まれ・Courtauld Institute of Art教授。**『The Spectacle of Women』(1988年)**で、フェミニズム美術史を確立し、女性の表象を社会史的に読み直す。Griselda Pollockの同僚として、イギリスのフェミニズム新美術史の基盤を築いた。
- イギリス側で固めた意図:元の連載がアメリカ寄り(October誌の理論的・視覚的アプローチ)だったのに対し、この妄想版はイギリスの社会史的・マルクス主義的・視覚文化寄りを強調。イギリスの新美術史は階級・イデオロギー・ジェンダーの分析が強く、BLOCK誌(1979–1989年)の貢献者を中心に選んだため、より「社会史的」な色合いが強くなります。
はい、イギリスに限定するより「ヨーロッパ側」で固めるのが、より自然でバランスの取れた妄想連載になると思います。理由と具体的な人選を以下にまとめます。なぜ「イギリスだけ」より「ヨーロッパ全体」で固めるべきか?
- 新美術史運動の実際の広がり
1980年代の「新美術史」はイギリスで「名称」として自覚的に起こりましたが、理論的基盤は**フランス(構造主義・ポスト構造主義)とドイツ(マルクス主義・批判理論)**の影響が非常に強く、イギリスはそれらを「美術史」に適用した受け手という側面が大きいです。
→ イギリスだけに絞ると、フランス・ドイツの理論的源流が抜け落ちてしまう。 - 1996年の日本の文脈で考えると
当時の日本美術界はアメリカのOctober系に偏っていたため、**対抗軸として「ヨーロッパの理論的・社会史的伝統」**をまとめて提示する方が、連載としてのインパクトが強くなる。
→ 「アメリカ偏重」に対するカウンターとして、大陸ヨーロッパ(フランス・ドイツ・イタリアなど)の視点を入れると、読者に「もう一つの新美術史」を見せる効果が期待できる。 - テーマの多様性とバランス
元の連載の6テーマ(記号、モダニズム超え、イデオロギー、批評と歴史、モデルとしての絵画、フェミニズム)を維持しつつ、ヨーロッパの多様な伝統(社会史、構造主義、フェミニズム、制度批判、美学理論)を反映させる方が、連載としての「方法論の多様性」が豊かになる。
- Roland Barthes(ロラン・バルト) -- 絵画という記号
- フランスの構造主義・記号論の巨匠。**『Mythologies』(1957年)や『Image-Music-Text』(1977年)**で、画像・視覚を記号として分析。Norman Brysonの視覚理論の直接的源流。
- イギリス新美術史の「記号論的転換」の基盤をフランスから提示。
- Jean Baudrillard(ジャン・ボードリヤール) -- モダニズムを超えて
- フランスのポストモダン思想家。**『Simulacra and Simulation』(1981年)**で、モダニズムの「実在」を解体し、シミュラークルの世界を論じる。Kraussのモダニズム批判に近いが、より哲学的・大陸的。
- モダニズムの「終わり」をフランスから読み直す。
- T.J. Clark(T.J.・クラーク) -- 絵画とイデオロギー
- イギリス生まれ・イギリスのマルクス主義美術史の代表。元の連載と同じく残す。**『The Painting of Modern Life』(1984年)**で、イデオロギー分析のイギリス版を象徴。
- Peter Bürger(ペーター・ビュルガー) -- 批評と歴史
- ドイツの前衛理論家。**『Theory of the Avant-Garde』(1974年)**で、歴史的前衛の「失敗」と制度性を論じる。Michael Friedの形式主義批評に対するヨーロッパ側の「制度・歴史」視点。
- 批評と歴史の関係をドイツから再考。
- Hans Belting(ハンス・ベルティング) -- モデルとしての絵画
- ドイツの美術史家。**『The End of the History of Art?』(1983年、英語版1987年)**で、美術史の「終わり」を論じ、絵画を文化・歴史の「モデル」として再定義。Yve-Alain Boisの形式主義とは対照的な、ヨーロッパの美術史哲学的アプローチ。
- Griselda Pollock(グリゼルダ・ポロック) -- フェミニズムと美術史
- イギリス生まれ・イギリスのフェミニスト美術史の中心。元の連載と同じく残す。**『Vision and Difference』(1988年)**で、フェミニズム美術史のイギリス版を象徴。
- 構成:フランス(Barthes, Baudrillard)×2、ドイツ(Bürger, Belting)×2、イギリス(Clark, Pollock)×2
→ ヨーロッパ大陸とイギリスのバランスが取れ、**「新美術史」の源流(フランス・ドイツ)と実践(イギリス)**を網羅。 - テーマの対応:元の6テーマをほぼ維持しつつ、ヨーロッパの理論的・哲学的伝統を強調。
- 日本の読者への効果:1996年当時、アメリカのOctober系が「最先端」として輸入されていた中、**「ヨーロッパの源流から見直す新美術史」**という視点を提供でき、アメリカ偏重へのカウンターとして意味深い連載になったはず。
- イギリスだけに固めると、社会史的・マルクス主義的側面が強くなるが、理論的源流が薄くなる。
- ヨーロッパ全体(フランス・ドイツ・イギリス)で固める方が、新美術史運動の本質(フランスの構造主義・ドイツの批判理論・イギリスの社会史的適用)をバランスよく伝えられる。